黒船 日本語オペラ
黒船 日本語オペラ 島田荘司作詞作曲
なぜ阿部正弘を日本語オペラで唄うのか。島田荘司が、主人公阿部正弘とその妻の物語、時代背景を語るとともに、2020年初演となった「黒船」の楽曲映像を公開
出典:http://www.woodyjoe.com/15040
「黒船」日本語オペラ創作の想い
クラシック音楽の歴史を彩ってきた名曲群、これらを生み出した芸術家の数々の衝動。「運命」はかく扉を叩けりとか、交響詩「新世界より」──。しかしベートーヴェンのドイツも欧州も、国が消滅するほどの激しい恐怖とともに、国の玄関口が叩かれたことはありません。この衝撃を真に味わった国民は、実は極東の、島国人なのです。
これらは黒船来襲にこそ、あてはまります。そうなら、日本人こそがこうした曲想に挑戦すべきでは──? とそう思ってきました。それはかつて、「本格ミステリー」という数理パズルなら、「塵劫記(じんごうき)」を愛好し続けた日本人の仕事では? と思ったことに似ています。
貴族の館での恋愛騒ぎ、そうした楽しい歴史は日本には乏しいのですが、日本人はかつて、はるかに進んだ軍事力を持つ軍船に、突如国の扉を激しく叩かれました。その時感じた国が消える恐怖。事実、地球上の非白人国はこの時、ほぼすべて消滅していたのです。そして命を捨て、国を守ろうと決意をした男たちの悲壮さでは、日本人はどこの国にも負けません。そうならこれを日本語の音楽で、とそういう挑戦を思ったわけです。
黒船と日本その背景
目次
阿部正弘講演 Q&A 糸永直美アナとの対談公演より
黒船来航と日本そして阿部正弘 阿部正弘講演」より
阿部正弘伝 母校誠之館高校同窓会報への寄稿文より
日本語オペラ 黒船 楽曲映像
日本語オペラ「黒船」(島田荘司作詞作曲•中山博之編曲)は、2020年12月1日に開催された「第5回ミステリーの巨匠・島田荘司先生と一緒に音楽を楽しむ会」で日本最高のテノール歌手・村上敏明さんを筆頭にオペラ歌手総勢8名が、黒船から11曲のアリアやデュエットを初披露しました。この公演での歌唱映像を公開いたします。また豪華なゲストの皆様の歌と演奏も。
● 主役・阿部正弘 : 村上敏明(テノール)
● 阿部正弘の妻・謹子:神田さやか(ソプラノ, 竹村真実(ソプラノ), 辰巳 真理恵(ソプラノ), 唐沢萌加(ソプラノ)
● 福山藩士:塩塚隆則(テノール), 土崎 譲(テノール), 村松繁紀(バリトン)
● ピアノ・編曲 : 中山博之
● ヴァイオリニスト : TOKO
● 司会 : こばやしあきこ(元NHKアナウンサー、女優)
● 特別ゲスト : 高井敏弘(NHK交響楽団 第一ヴァイオリニスト), 桑原理一郎 (モンスターストライク作曲者), 天宮菜生(元タカラジェンヌ、歌手), 恵中瞳 (南雲堂専属歌手)
福山藩士の唄(沖に見える鉄の船)
誇りに震えながら
福山藩士に憧れる村娘たち。命を捨てて黒船に立ち向かおうとしている若い防人たちに、村娘たちが捧げ歌う応援の歌。
国破れて
藩士も村娘たちも黒船をうかがう丘から去り、1人になった江木鰐水が、アヘン戦争以降、白人に蹂躙され続けるシナの悲哀に心を馳せ、祖国への憂いと愛国の心を唄いあげる。
春の歓び
時は溯り、正弘と謹子との出会いの頃。祖国を背負って立つことを期待された若き逸材阿部正弘との嬉しい出会いに心を躍らせる越前福井藩の才媛、謹子。その恋の歓びを謹子が歌う。
金の屏風絵
銀の小舟
阿部正弘の妻謹子。「私は多大な責任を一人で負うあなたの妻になったなら、私は強くなって、あなたを乗せて夜の海を渡る銀の小舟になります」正弘の妻となる謹子の決意と矜持。
百舌鳥の哭く夜
命を捨て黒船の兵と闘うと決意を叫ぶ藩士たち。門田朴斎だけはおもんばかる。黒船の兵士たちは真に日本侵略を意図しているのか、殺し合わず、まずは会って真意を訊きたい、しかしひとたび戦になるのなら、私は死ぬことを決して恐れはしない。
武器をとれ
阿部正弘は自分の体が不治の病いに冒されていることを知っていた。病いで死ぬくらいなら、もののふらしく、真っ先に敵陣に斬り込んで華々しく散りたいと切望する。黒船来襲でそんな場が与えられたことを喜び、自分とともに死んでくれるかと、家臣に問いかけ語りかける。
瞽女(ごぜ)の歌
阿部の訴えに、あなたとともに死にますと応える妻謹子。謹子は唄う。越後をさすらう瞽女(ごぜ)たちの歌を子守唄に私は育ちました。会えない母を探し、生涯を闇にさすらう彼女らを思えば、自分の命などもうとうに冬の海に棄ててきましたから。
闘いは迫りて
阿部の側近の一人石川和助が、阿部の気持ちに応え、迫る黒船との闘いへの決意を唄う。その後ろには門田朴斎、江木鰐水も控えながら。
亡き妻に寄せて
妻を亡くした阿部正弘。正弘様そして福山藩にとっても御正妻なしでは乗り切れません、どうか後添えをおもらいくださいませと家臣も仕える女たちも申し上げる。しかし正弘は、謹子亡き今は他の女のことなど思うこともできぬと亡き妻謹子へ溢れ出る想いを唄う。
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